
マンション大規模修繕の費用相場と4割発生する追加費用のリスクを解説
大規模修繕は、マンションを長く快適に保ち、資産価値を維持するうえで欠かせない工事です。 しかし、まとまった費用が必要になるため、多くの方が様々な不安を抱えているのではないでしょうか。 とりわけ、「費用を払えない場合にどうすればいいのか」という切実な悩みも多く聞かれます。 そこで本記事では、特に以下のような疑問や不安をお持ちの方に向けて、大規模修繕の専門家視点から具体的な情報をわかりやすく解説します。 マンション大規模修繕の費用相場はどのくらい? 「追加費用」が発生するかもと聞いたけど、どんな原因があり、どう対策すればいい? 万が一、費用が払えない場合の基本的な対処法は? 「今すぐ必要な費用目安だけ知りたい」という方も、「将来に備えて情報を整理しておきたい」という方も、ぜひ最後までご覧ください。 マンション大規模修繕の費用相場は? 「マンション大規模修繕は高額になりがち」と言われますが、実際どの程度の予算を想定すればいいのでしょうか。 正直なところ、マンションごとの規模や劣化状況によって必要な費用は大きく変わるため、一概に「相場はこれ」とは言えません。 そこで今回は、国土交通省が公表しているデータを参考にしながら、大まかな費用目安を解説していきます。 出典:「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」 1戸あたりの相場は? 中央値は「100〜125万円/戸」 出典:「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」 国土交通省の調査や業界の統計データによると、1戸あたり100〜125万円が最も一般的な費用相場とされています。 たとえば、 30戸の小規模マンションなら、約3,000〜3,750万円 100戸規模の中・大規模マンションなら、約1億〜1億2,500万円 程度になる計算です。 床面積あたり「1.0〜1.5万円/㎡」という目安も また、戸数だけでなく延べ床面積を基準に考える方法もあります。 国土交通省の資料では、「1.0〜1.5万円/㎡」を目安にする試算が紹介されています。 ファミリータイプ中心のマンションなど戸あたりの専有面積が大きい場合は、「床面積ベース」で見たほうが実態に近いケースもあるため、両方を併せてチェックしてみましょう。 施工規模や工事内容ごとの費用相場 大規模修繕の費用には、防水工事・外壁塗装・配管設備更新など様々な項目が含まれます。 以下に代表的な工事項目の相場をまとめました。 工事項目 おおよその単価目安 主な内容・影響 防水工事 15〜20万円/戸 屋上やバルコニーなどの防水層更新。雨漏り対策に直結。 外壁補修・塗装 1,000〜5,000円/㎡ ひび割れ補修や高耐候塗料で費用が増減。 給排水管更新 70〜200万円/棟 配管材質や専有部工事の範囲次第で費用に大きな差。 このように、同じ戸数でも工事項目が増えれば総額が大きく跳ね上がるため、管理組合の方は「どの範囲まで工事を行うか」をしっかり検討しておくことが大切です。 工事回数を重ねると費用は上がる傾向 同じマンションでも、修繕回数を重ねるごと(=築年数が進むごと)に、工事費用(総額)は高くなるのが一般的です。 出典:「令和3年度マンション大規模修繕工事に関する実態調査」 上記の国土交通省の調査データでも、回数によって最も割合が高い価格帯に違いが見られますね。 1回目(築12〜15年前後) 最多価格帯は4,000万〜6,000万円 2回目(築25〜30年前後) 最多価格帯は6,000万〜8,000万円 3回目以降(築40年以上) 6,000万〜8,000万円が最多。1億円超も増加 このように、回数を重ねるごとに費用が上がっていく背景には、「築年数」や「物価上昇」が関わっています。 築年数が増えると修繕範囲は増える: 築年数が進むほど、当然ながら建物の劣化箇所は増えます。 1回目は外壁塗装や屋上防水といった外装中心の工事が多いですが、2回目以降は給排水管、電気設備、エレベーターなど、費用のかかる内部設備の更新も必要になってきます。 3回目以降では、さらに構造躯体の補修や耐震補強など、より大掛かりな工事が必要となるケースも増えます。 上がり続ける物価・人件費: 修繕を行う時期の経済状況によって、数年前と比べて資材価格や人件費が高騰している場合がほとんどです。これもコストアップの大きな一因に。 ただし、3回目以降の修繕でも、それまでのメンテナンスが良好であれば工事内容を絞って費用を抑えられるケースもあります。 また、大規模マンションは足場などの共通費用を多くの戸数で割れるため1戸あたり負担は割安に、逆に小規模マンションでは割高になりやすいという傾向も。 だからこそ、相場はあくまで参考程度と考え、ご自身のマンションの長期修繕計画や実際の劣化状況に基づいた資金計画を立てることが何より重要です。 追加費用が「4割以上」の現場で発生している? 見積もりを取ったときは「予算内に収まりそう」と思っていても、実際に工事を始めてみたら追加費用が発生することがあります。 マンション管理センターなどの調査によると、大規模修繕の現場の4~5割程度で当初見積以上の支出が生じるとも言われています。 出典:「マンションの大規模修繕工事における工事中の変動要素の取り扱いに関する調査結果」 ここでは、追加費用がかかりやすい主な原因と対処法をQ&A形式でご紹介します。 事前調査で発見できなかった細かな破損や不具合 Q:どんな不具合が想定されますか? A:外壁のタイル剥落、鉄筋が腐食しているコンクリート内部の補修、防水層の劣化などが代表的です。事前調査では分かりにくい箇所が工事中に見つかり、補修工事が追加になることがあります。 対処法: 赤外線カメラなど、精密調査を導入して事前診断の精度を高める 修繕費用の5~10%ほどを予備費として確保しておく タイル補修費用の増加は特に多いため、見積もり段階から大まかな想定をしておく 足場設置の難易度による追加費用 Q:足場が複雑なだけで費用はそんなに増えるもの? A:増えます。足場費用は工事全体の約2〜3割と大きな割合を占めるため、設置の難易度(特殊な形状、狭い敷地など)が上がると、追加の人件費や機材費が発生し、総額に影響が出やすいです。 対処法: 仮設計画を事前に入念に行い、契約書で「想定外の追加工事が生じた場合の承認ルール」を明確にする。 狭いスペースに足場を組むときはクレーン車が必要となる場合もあり、その分のコストを見込んでおく。 場合によっては、足場不要で施工できる「無足場工法」の業者を検討する。 🔗無足場工法(ゴンドラ)について 工事の延期による追加費用 Q:悪天候やトラブルで工期が延びた場合、どのような費用がかさみますか? A:主に人件費と仮設費用です。工期が1日延びるたびに、施工管理者や作業員の人件費、足場の賃貸費用などがかかります。 対処法: 工事スケジュールの計画を綿密に立て、雨天リスクの高い時期を避ける 契約書に「天候等やむを得ない理由で工期延長した場合の費用負担」を規定しておく 遅延が予想される場合は早めに住民や理事会へ共有し、トラブルを防ぐ 修繕中の災害発生による破損箇所の増加 Q:台風や地震など、ほとんど起きないケースではありませんか? A:頻度は高くありませんが、ゼロではありません。施工期間中に自然災害が起きると、足場が崩れたり、建物に新たな破損が生じる可能性があります。 対処法: 建設工事保険に加入し、災害時に発生する復旧費を一部カバーできるようにする 自治体が行う「災害復旧助成」などが利用できる場合もあるため、必要に応じて問い合わせる 保険の補償範囲がどこまで及ぶか、契約時に施工業者と十分に確認する 修繕費用を払えない場合はどうする? 大規模修繕費用は数千万円から時には数億円に上ることもあり、「修繕積立金だけでは足りない」「一時的に支払うのが難しい」というのはよくある話。 そんなときに活用できる、主な対策としては以下の方法が考えられます。 修繕積立金の値上げ 一時金(臨時徴収金)の徴収 ローンの利用 工事の延期 このような対策にはそれぞれメリット・デメリットがあり、どの方法が最適かはマンションの状況や住民の合意形成によって異なります。 大規模修繕費用が払えない場合については、下記記事でさらに詳しく解説していますので、併せてこちらもご覧ください。 大規模修繕に「助成金・補助金」は活用できる? 大規模修繕の費用負担を少しでも軽くするために、国や地方自治体が設けている補助金・助成金制度の活用する方法もあります。 うまく利用できれば、費用の大きな助けとなるでしょう。 国の制度例 長期優良住宅化リフォーム推進事業や、省エネ改修(断熱改修など)に対する補助など。 地方自治体の制度例 修繕計画策定費、耐震改修工事費、バリアフリー改修費など、自治体独自の補助。 多くの制度では、工事が始まる前に申請する必要があるため、計画段階で早めに情報収集を始めましょう。 また、制度の内容や条件、申請期間は年度や自治体によって大きく変わるため、必ず最新の公式情報を直接確認するようにしてください。 お住まいの自治体の公式サイトで関連キーワード(「マンション 大規模修繕 補助金」など)で検索。 マンション管理センターのウェブサイトで全国の支援制度一覧を確認。 自治体の住宅課や建築指導課などに直接問い合わせる。 補助金・助成金制度の一般的な概要や注意点については、当社ゆうき総業でも以下の記事でご紹介しています。 マンション大規模修繕の費用は計画的に! 本記事では、マンション大規模修繕の費用に関するポイントを、施工業者の視点から解説してきました。 費用への不安を解消し、リスクを抑えるために、以下の点を押さえておきましょう。 費用相場は1戸あたり100〜125万円が目安 追加費用リスクは約4~5割で発生 費用不足時の対策は計画的に 何よりも重要なのは、早めに計画を立て、信頼できる施工業者としっかりコミュニケーションを取ることです。 追加費用のリスクを理解し、契約内容(保険や工期延長時の取り決めなど)を事前に確認することで、トラブルを未然に防ぐことができます。 当社ゆうき総業は、足場を使わない「無足場工法」を得意としています。 足場の設置・解体に伴う費用と工期を大幅に削減でき、コストダウンや早期の工事完了につながります。 「コストを抑えたい」「工事期間を短くしたい」というご要望がございましたら、ぜひ当社にご相談ください。 仙台をはじめとした東北6県(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)および首都圏では、無料出張お見積もりを実施しております。 大規模修繕工事の専門家として、大切なマンションの資産価値の維持を全力でサポートさせていただきます。 🔗マンションオーナー向けページ