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屋上防水工事、4つの種類どれが正解?最適な工法の選び方をプロ目線で解説

屋上の防水工事を考え始めると、まず目につくのが各工法の「費用」と「耐用年数」でしょう。

高額な工事だからこそ、少しでもコストを抑え、長持ちするものを選びたいと思うのは当然のことです。

しかし、その数字だけで判断してしまう前に、ぜひ知っておいていただきたい視点があります。

それが、ご自身の建物と防水工事の「相性」です。

なぜなら、屋上の形状、既存の防水層の状態、さらにはお住まいの地域の気候によって、同じ工法でも効果の持続性は大きく変わってくるからです。

本来の性能を発揮するには、建物に合った工法を選ぶことが欠かせません。

この記事では、専門家の視点から、代表的な4つの工法(アスファルト・塩ビシート・ウレタン・FRP)の基本的な違いに加え、あなたの建物に最適な工法を見極めるための「相性」のチェックポイントを分かりやすく解説します。

この記事でわかること
  • 主要な4つの防水工法の違いと特徴が一目でわかる比較表
  • 実際の施工事例にもとづく、各工法の具体的な解説
  • あなたの建物に最適な工法を選ぶためのプロの4つの視点
  • 信頼できる業者を見極めるための3つのチェックポイント
この記事を書いた人
結城 伸太郎

職歴:27年

得意分野:防水工事・外構工事・大規模改修管理業務

保有資格:1級建築施工管理技士、1級建築塗装技能士、1級ポリマーセメント防水、1級改質アスファルト防水、外壁1級仕上げ技能者、防水登録基幹技能者、外壁仕上基幹技能者、国際ライセンス サーモグラファーレベル1、監理技術者、職長安全衛生教育、他

【比較表】ひと目でわかる!屋上防水4大工法の違い

まずは、代表的な4つの工法がそれぞれどんな特徴を持っているのか、全体像をつかんでみましょう。

建物の状況によって最適な工法は変わるため、それぞれの長所・短所を知っておくことが大切です。

項目 アスファルト防水 塩ビシート防水 ウレタン防水 FRP防水
工法名 アスファルト防水 塩ビシート防水 ウレタン防水 FRP防水
費用相場
(/㎡)
約5,000
~8,000円
約5,000
~8,000円
約4,500
~7,000円
約6,000
~9,000円
耐用年数 約15~20年 約10~15年 約8~12年 約10~12年
メリット
  • 信頼性、実績が豊富
  • 防水性能が高い
  • 耐用年数が長い
  • 耐候性、耐久性が高い
  • 工期が短い
  • デザイン性が高い
  • 複雑な形状に対応
  • 軽量で建物への負担が少ない
  • 部分的な補修がしやすい
  • 非常に軽量で高強度
  • 摩耗に強い
  • 速乾性で工期が短い
デメリット
  • 重量がある
  • 施工中に臭いや煙が発生しやすい
  • 火気を使用する工法がある
  • 複雑な形状には不向き
  • 衝撃に弱い
  • 施工業者の技術力が問われる
  • 職人の技術力で品質が左右される
  • 乾燥に時間がかかる
  • 紫外線に弱い場合がある
  • 広い面積には不向き
  • 硬いためひび割れリスクがある
  • 施工中の臭いが強い
  • 費用が比較的高め
こんな
建物に
おすすめ
  • コンクリート造の大規模な建物
  • 長期的な信頼性を最優先したい建物
  • 広い面積の屋上
  • 工期を短縮したい建物
  • 室外機や配管が多い屋上
  • 既存の防水層を活かしたい場合
  • 小規模な屋上
  • 人の歩行が多い場所
  • 重量制限が厳しい建物

【事例で解説】主要な屋上防水工事の種類と特徴

ここからは、実際の施工事例を交えながら、各工法を具体的に見ていきましょう。

どんな建物で、どのように施工されたのかを知ることで、ご自身の建物の場合をイメージしやすくなるはずです。

1. アスファルト防水|信頼と実績の定番工法

アスファルト防水は、古くからあるもっとも信頼性の高い工法の一つです。

液状のアスファルトと防水シートを何層にも重ねて、分厚い防水層をつくります。

その歴史と実績から、特に大規模なマンションやビルで採用されることが多いのが特徴です。

メリット 防水性能が非常に高く、耐用年数も長い。
デメリット 重量があるため木造建築には不向き。施工中にアスファルトを溶かす際の臭いや煙が出ることがある。
費用相場 5,500円/㎡~
耐用年数 15~25年

【事例】某博物館(山形県)|緑地だった屋上を、信頼性の高いアスファルト防水で改修

工事の概要 屋上緑地を全面的に撤去し、アスファルト防水(断熱工法)で改修。
ご提案の
ポイント
歴史が長く、もっとも信頼性が高いアスファルト防水をご提案しました。今回は、断熱材を組み込む「AI-1」という断熱工法を採用。4層にも及ぶ防水層を形成し、長期的な安心を確保します。
担当者の
コメント
もともと屋上緑化されていたため、まずは土や植物をすべて撤去する作業から始まりました。アスファルトを溶かす際の煙の排出場所などに配慮が必要な公共施設の工事でしたが、大きな問題なく完了できました。何層にも重ねるアスファルト防水は、施工している側から見ても「これなら漏れるわけがない」と自信を持って提供できる工法です。

2. 塩ビシート防水|耐久性とデザイン性に優れた近代工法

塩ビシート防水は、塩化ビニル樹脂でできたシートを屋上に貼り付ける工法です。

紫外線や熱に強く、耐候性に優れているのが大きな特徴。

シート自体が工場で生産されるため、品質が安定しており、工期を短縮しやすいメリットもあります。

メリット 耐久性・耐候性が高い。比較的、工期が短い。カラーバリエーションがあり、デザイン性が高い。
デメリット シート同士の接合は熱で溶かして行うため、施工業者の技術力が問われる。複雑な形状の屋上には施工しにくい。
費用相場 5,500円/㎡~
耐用年数 13~15年

【事例】旅館(宮城県)|営業への影響を最小限に抑え、屋上に大浴場を新設

工事の概要 不要になった冷却塔などを撤去し、塩ビシート防水で屋上を改修。
ご提案の
ポイント
お客様の「営業になるべく影響を出したくない」というご要望に応え、短い工期で施工できる塩ビシート防水(機械的固定法)をご提案。また、配管などが複雑に入り組む箇所は、部分的にウレタン防水を組み合わせる「複合工法」で、雨仕舞いの確実性を高めました。
担当者の
コメント
旅館という特性上、騒音の出る作業は10時〜15時に限定するなど、スケジュールに工夫が必要でした。工事完了後、無事に大浴場が作れたと伺っております。

【事例】5階建てビル(福島県)|雨漏りを止めるための屋上防水

工事の概要 外壁からの雨漏り調査と補修に合わせ、屋上の塔屋部分を塩ビシート防水で改修。
ご提案の
ポイント
雨漏りの原因は外壁でしたが、建物の防水性を総合的に高めるため、屋上塔屋部分の防水改修もご提案しました。
担当者の
コメント
雨漏り調査が先行した物件です。外壁のALC(軽量気泡コンクリート)からの雨漏りを特定し、防水性の高い塗料で外壁を補修すると同時に、屋上も塩ビシートでしっかり防水しました。

3. ウレタン防水|複雑な形状にも対応できる塗り物系防水

ウレタン防水は、液状のウレタン樹脂を複数回塗り重ねて、ゴム状で弾性のある防水層をつくる工法です。

液体を塗る工法なので、室外機や配管など、複雑な形状の屋上にも隙間なく施工できるのが最大の強み。

また、軽量で建物への負担が少ないのも特徴です。

メリット どんな形状にも対応できる。軽量。部分的な補修がしやすい。
デメリット 職人の手作業で仕上げるため、技術力によって品質に差が出やすい。乾燥に時間がかかる。
費用相場 4,000円/㎡~
耐用年数 8~10年

【事例】塩ビシート防水との複合工法(宮城県の旅館)

工事の概要 塩ビシート防水をメインとした屋上改修工事において、配管などが複雑に入り組む箇所に、部分的にウレタン防水を施工。
ご提案の
ポイント
塩ビシートでは対応が難しい複雑な形状の部分も、液体であるウレタンを塗り込むことで、防水層の連続性を確保し、雨水の侵入リスクを徹底的に排除しました。このように、他の工法と組み合わせることで、それぞれの長所を活かし、より確実な防水性を実現できます。

4. FRP防水|軽量かつ高強度な防水層

FRP防水は、ガラス繊維で強化されたプラスチック(Fiber Reinforced Plastics)のシートに液状のポリエステル樹脂を塗り、硬化させて防水層をつくる工法です。

非常に軽量でありながら、強度・耐久性が高く、船舶の部材にも応用されるほど頑丈なのが最大の特徴です。

硬化するのが速いため、短い工期で施工できます。

メリット 非常に軽量で建物への負担が少ない。硬くて摩耗に強いため、人が歩く場所にも適している。速乾性で工期が短い。
デメリット 硬い防水層のため、建物の動きや振動でひび割れが起きることがある。紫外線に弱いため、トップコートの定期的な塗り替えが欠かせない。施工中の臭いが強い。
費用相場 5,000円~/㎡
耐用年数 10~15年程度(※トップコートの定期的なメンテナンスにより、さらに長持ちさせることも可能です)

【FRP防水の主な用途】

今回は屋上でのFRP防水の施工事例はありませんでしたが、戸建てのベランダやバルコニーといった、比較的面積が狭く、人の歩行が多い場所で採用されることが多い工法です。

屋上であっても、小規模な陸屋根や、重量制限が厳しい建物などでは有効な選択肢となります。

【事例】某工場(加美郡)|漏水した飲料水タンクをFRP防水で再生

工事の概要 工場に設置された飲料水タンク(5棟、合計400㎡)の漏水を、内面のFRP防水と外面の塗装で改修。
ご提案の
ポイント
飲料水用タンクのため、安全性の高いJWWA認定の材料を使用。漏水箇所であるジョイントやビス周りは、FRPでしっかり補強することで、交換以上の耐久性を確保しました。
担当者の
コメント
当初はタンク自体の交換をご検討されていましたが、FRPによる防水・防食工事で対応することで、コストを大幅に削減できました。工場の稼働に影響が出ないよう1棟ずつ施工を進め、無事に漏水を止めることができました。FRPはこのような特殊な環境でも高い性能を発揮する工法です。

あなたの建物に最適な防水工事を選ぶ4つの視点

各工法の特徴がわかったところで、次はいよいよあなたの建物に最適な工法を選ぶステップです。

ここでは、判断に役立つ4つの視点をご紹介します。

これらに沿って考えれば、どの工法が合っているかが見えてくるはずです。

視点1:建物の現状で選ぶ

まずは、建物の「今」の状態を正しく知ることから始まります。

  • 既存の防水層は何か
    現在の防水層の種類によって、上から重ねて施工できる「かぶせ工法」が使えるかどうかが変わります。かぶせ工法が使えれば、廃材処分費や工期を大きく削減できます。
  • 屋上の形状は複雑か
    室外機や配管、脱気筒などが多く複雑な形状をしている屋上には、継ぎ目なく施工できるウレタン防水が向いています。逆に、広くて平らな屋上なら、塩ビシート防水が効率的です。
  • 下地の状態は良いか
    既存防水層の劣化が激しい場合は、一度すべて撤去してから施工する必要があるため、どの工法を選ぶにしても下地処理の費用と時間が必要になります。
  • 屋上を歩行用に使うか
    人が頻繁に歩く場所であれば、摩耗に強いFRP防水や、保護層を追加したウレタン防水などが適しています。

視点2:ライフサイクルコストで選ぶ

初期費用(イニシャルコスト)の安さだけで選ぶのは避けましょう。

防水工事は、将来のメンテナンス費用まで含めた「ライフサイクルコスト」で考えることが大切です。

たとえば、ウレタン防水は初期費用が比較的安いですが、5年ごと程度でトップコート(保護塗装)の塗り替えが必要です。

一方、アスファルト防水は初期費用が高いものの、耐用年数が長いため、長期的に見ればメンテナンスの回数が少なく済み、結果的にコストを抑えられる可能性があります。

視点3:将来のメンテナンス計画で選ぶ

某旅館外壁改修工事_付帯部塗装④

10年後、20年後に次の改修工事をおこなうときのことも考えておきましょう。

「かぶせ工法」で改修を重ねていくと、防水層が何層にもなり、建物の重量が増えてしまいます。

どこかのタイミングで、一度すべての防水層を撤去する「全撤去」が必要になるかもしれません。

将来のメンテナンス計画や、建物をあと何年維持したいか、といった長期的な視点を持つことが、後悔しない選択につながります。

視点4:東北地方(豪雪・寒冷地)ならではの気候条件に合わせた工法

東北地方のような積雪が多く、冬場の気温が低い地域では、防水工事にも特別な配慮がいります。

アスファルト防水 安定した防水性能を誇りますが、積雪の重みによる歪みなどに耐えられる、しっかりとした下地作りが前提です。
塩ビシート防水 低温下でも硬化しにくいシートを選ぶなど、寒冷地仕様の材料選びが重要です。
ウレタン防水 一般的なタイプは低温下では硬化に時間がかかるため、冬場の施工には材料の選定など特別な配慮が必要です。
FRP防水 硬い性質のため、低温による収縮でひび割れを起こすリスクがあり、寒冷地での使用には注意が必要です。

信頼できる屋上防水工事業者を見極める3つのチェックポイント

最適な工法を選ぶのと同じくらい、あるいはそれ以上に重要なのが「信頼できる業者に工事を任せること」です。

防水工事の成否は、業者選びで決まると言っても過言ではありません。

業者選びで迷ったときは、まず以下の3つのポイントをチェックしてみてください。

これらを満たしている業者であれば、安心して相談できる一つの目安になります。

  • 施工実績の量と質
    ご自身の建物と似たような規模や構造の建物の施工実績が豊富かを確認しましょう。ウェブサイトの施工事例を見るのが一番わかりやすいです。
  • 現地調査と提案の具体性
    「現地調査を丁寧におこない、なぜその工法が最適なのかを具体的に説明してくれるか」は、非常に重要なポイントです。あなたの建物の状況を無視して、特定の工法ばかりを勧めてくる業者には注意が必要です。
  • 資格と保証
    「防水施工技能士」などの専門資格を持つ職人が在籍しているか、工事後の保証制度(アフターサービス)はしっかりしているか、といった点も確認しておくと安心です。
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まとめ:屋上の防水工事で迷ったら、まずは専門家による建物診断を

この記事では、屋上防水の代表的な4つの工法と、ご自身の建物に合った工法を見極めるための視点について解説してきました。

どの工法にも一長一短があり、「絶対にこれ」という正解はありません。

大切なのは、費用や耐用年数といったスペックだけでなく、建物の現状と将来のメンテナンスまで見据えた、総合的な視点を持つことです。

この記事のポイント
  • 防水工事は「費用」「耐用年数」に加え、建物との「相性」で判断する
  • 建物の形状や既存防水層、ライフサイクルコストなど4つの視点で比較検討する
  • 東北の気候(豪雪・寒冷)に合わせた材料選びや施工が重要
  • 工法選びと同じくらい、信頼できる業者選びが工事の成否を分ける

もし、「うちの建物にはどの工法がいいんだろう?」「そもそも、今すぐ工事が必要な状態なの?」といった疑問があれば、専門家による客観的な診断を受けてみることをおすすめします。

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