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外壁タイル剥落事故で管理者が負う責任とは?事故を防ぐ対策まで徹底解説

マンションやビルの管理者として、「外壁のタイルはまだ大丈夫だろう」と思っていませんか?

しかし、外壁タイル剥落事故は全国で実際に起きており、管理者が負う責任は想像以上に重いものです。

実は、「知らなかった」では済まされない法的責任があり、管理者に落ち度がなくても建物に欠陥があれば重い賠償責任を負うことになります。

この記事では、数多くの大規模修繕を手がけてきた専門家の視点から、管理者が知っておいてほしい法的責任の重さと、事故を未然に防ぐための具体的な対策をお伝えします。

この記事でわかること
  • 外壁タイル剥落事故の実際の事例と被害の深刻さ
  • 管理者が負う法的責任と賠償額の実態
  • 事故を防ぐための点検方法と修繕工法の選び方
  • 信頼できる専門業者を見極めるポイント
この記事を書いた人
結城 伸太郎

職歴:27年

得意分野:防水工事・外構工事・大規模改修管理業務

保有資格:1級建築施工管理技士、1級建築塗装技能士、1級ポリマーセメント防水、1級改質アスファルト防水、外壁1級仕上げ技能者、防水登録基幹技能者、外壁仕上基幹技能者、国際ライセンス サーモグラファーレベル1、監理技術者、職長安全衛生教育、他

外壁タイル剥落事故はどれくらい起きている?国内の実際の事例

外壁タイルの剥落事故は、ニュースで見かけることも多く、決して珍しいことではありません。

近年の事故を見ると、築年数や建物の種類に関係なく発生しています。

人身事故につながった深刻なケース

まず、実際に人身事故につながってしまった深刻なケースを見てみましょう。

これらの事故では、被害者の方が重軽傷を負い、中には命に関わる重篤な状態になった事例もあります。

日付 場所 状況・被害内容 原因・背景
2023年8月 和歌山市
(台風7号)
外壁が落下し、60歳男性が意識不明の重体。他にも負傷者あり 台風による強風+老朽化
2016年8月 東京都三鷹市 台風時に外壁タイルが剝落し男性に直撃、負傷 強風+既存の劣化。数時間前にも大規模剝落あり
2016年7月 大阪市浪速区
9階建てビル
タイル30〜40枚が落下し、女性が後頭部に当たり 軽傷 経年劣化・接着力低下
2005年6月 東京都中央区「ニューリバービル」 斜壁(タイル+コンクリート)が崩落し、女性重傷・男性軽傷 下地劣化・施工不備
1989年11月 北九州市 昭和町団地 最上階から大規模剝落、2人死亡・1人重傷 老朽化・内部腐食

幸い人的被害はなかったが危険だった事例

一方で、幸いにもけが人は出なかったものの、「あと少しで大変なことになっていた」という事例もたくさんあります。

これらの「ヒヤリハット」事例こそ、私たちがもっとも注意すべき事例です。

日付 場所 状況・被害内容 原因・背景
2025年9月 熊本市 中央区 国道3号沿い 外壁タイル(約4m×2m)が歩道へ落下。通行人が巻き込まれそうになったが けが人なし 浮き・剝離進行、強風などが引き金の可能性
2025年3月 JR仙台駅 西口ペデストリアンデッキ タイル(40×90mm・約200g)が高さ18.8mから落下。出入口を一時封鎖、けが人なし 強風+剝離が要因
2025年2月 広島県 呉市きんろうプラザ 外壁の一部が落下、けが人なし。この事故で市所有施設237棟の未点検が判明 点検未実施が背景
2024年8月 福岡市 博多区「大博通り」沿いマンション 10階付近の外壁片が歩道に落下、けが人なし 経年劣化が要因とみられる

これらの事例を見ると分かるのは、タイル剥落は「古い建物だけの問題」ではないということです。

特に注目すべきは、けが人が出なかった事例でも、仙台駅のように多くの人が利用する施設でも起きています。

タイミングが少し違っていたら、大変な事故になっていたかもしれません。

なぜタイルは剥がれ落ちる?3つの主な原因と放置の危険性

私たちが数多くの大規模修繕を手がけてきた経験から、タイル剥落の原因は大きく3つに分けられます。

経年劣化による接着力の低下

築15年を過ぎると、タイルを貼り付けているモルタルの接着力が徐々に低下してきます。

特に南側や西側など、太陽の光をたくさん浴びる面は劣化が早く進みます。

目地にひび割れができると、そこから雨水が入り込んで内部の鉄筋を錆びさせてしまいます。

錆びた鉄筋が膨らむと、内側からタイルを押し出して「浮き」が発生します。

実際に私たちが手がけた10階建てマンションの大規模修繕では、鉄筋が露出している欠損部が複数箇所で確認され、ポリマーセメントモルタルでの補修が必要でした。

初期施工不良による早期劣化

施工時のモルタル塗布量の不足や、下地の清掃不良は、数年後に問題として現れます。

新築時の施工品質が低いと、通常より早く劣化が進行し、予想以上に早い段階でタイルの浮きや剥落が発生することがあります。

地震や台風などの自然災害の影響

東日本大震災以降、地震による建物への影響も無視できません。

建物が揺れることで、タイルと下地の間に小さなひび割れができ、そこから劣化が早まってしまいます。

また、台風や強風時には、建物に想定以上の負荷がかかり、既に弱っていた箇所から剥落が起きます。

ここで重要なのは、こうした劣化は見た目では分からないということです。

外から見ると何ともなさそうでも、実は内部でじわじわと劣化が進んでいることがあります。

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管理者はどんな責任を負う?「知らなかった」では済まない法的責任

もし、あなたが管理する建物でタイル剥落事故が起きてしまったら、どんな責任を負うことになるのでしょうか。

一番大切なポイントは、「知らなかった」「気づかなかった」では責任を逃れられないということです。

過失がなくても責任を負う「無過失責任」とは

民法第717条という法律では、建物に欠陥があって人に損害を与えた場合、管理者や所有者が賠償責任を負うと決められています。

これは「無過失責任」とよばれ、管理者に過失がなかったとしても、欠陥が存在した時点で責任を負わなければならないという、非常に重い責任です。

「定期的な点検をしていなかった」「危険な箇所の報告を放っておいた」といったことがあると、管理責任を果たしていなかった証拠になってしまいます。

賠償額はいくらになる?実際の事例から見る金額

外壁タイルの事故で人がケガをした場合、賠償額は数千万円になることもあり得ます。

実際に、施工不良が原因の裁判では1億円を超える和解金が支払われたケースも報告されています。

賠償金には治療費だけでなく、仕事を休んだ分の損失や、将来の収入減少、慰謝料なども含まれるので、思っている以上に高額になってしまいます。

お金の賠償だけじゃない!刑事責任を問われることも

管理者が問われる責任は、金銭的な賠償(民事責任)だけではありません。

事故の状況が悪質な場合、業務上過失致死傷罪などの刑事責任を問われることもあります。

  • 民事責任: 被害者への損害賠償
  • 刑事責任: 管理者個人や法人が罰金刑や禁錮刑などの罰則を受ける

刑事責任が問われるのは、「事故が起きそうだと予想できたのに」「対策をすれば防げたのに」管理者がそれをしなかった場合です。

そうなると、事故は単なる「運が悪かった」ではなく、「防げたはずの人災」として扱われてしまいます。

事故を防ぐにはどうすればいい?必要な点検と修繕の方法

事故を防ぐことは、管理者の大切な役割であり、法律で決められた義務でもあります。

建築基準法で義務付けられた点検をきちんと行う

一定の規模以上の建物では、建築基準法で定期的な専門家による点検が義務付けられています

外壁のタイルも点検の対象で、打診調査などの専門的な調査が必要です。

この法定点検をサボってしまうと、法律違反になるだけでなく、万が一事故が起きたときに「やるべきことをやっていなかった」として、非常に不利な立場に立たされてしまいます。

調査でよく使われる方法(打診・赤外線)

ヘルメットをかぶった作業員が、打診棒で建物の外壁タイルを点検している様子

タイルが剥がれ落ちる前には、たいてい「浮き」という前兆があります。

この浮きを早めに見つけることが、事故を防ぐポイントです。

調査方法には、ハンマーでタイルを叩いて音で判断する「打診調査」や、赤外線カメラで温度の違いを見る「赤外線調査」などがあります。

打診調査 打診棒でタイルを叩き、音の違いで浮きを判定。確実性が高く、コストも抑えられる。
赤外線調査 赤外線カメラで温度差を検知し、浮きや剥離を発見。高所でも安全に調査可能。

まずは専門家に相談して、あなたの建物に合った調査方法で「壁の健康診断」をしてもらうことから始めましょう。

問題が見つかったらどう直す?修繕方法の選び方

調査で「浮き」などの問題が見つかったら、その状況に合わせて修繕を行います。

樹脂注入工法 部分的な浮きに対し、接着剤を注入して固定。比較的低コストで対応可能。
貼り替え工法 劣化が広範囲の場合、タイルを新しく貼り替える。根本的な解決が可能。
アンカーピンニング工法 アンカーピンでタイルを固定し、剥落を防止。既存タイルを活かせる。 

また、今あるタイルの上から特殊なシートを貼って、万が一剥がれても落ちないようにする「剥落防止工法」という方法もあります。

それぞれの工法の詳しい内容や費用については、こちらの記事で詳しく説明していますので、気になる方はぜひご覧ください。

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どの業者に頼めばいい?信頼できる専門業者の選び方

外壁タイルの補修は、建物の安全と資産価値に直結する大切な工事です。

どんなに優れた工法も、それを施工する業者の技術力や知識が伴わなければ意味がありません

大切な建物を安心して任せられる専門業者を見極めるための、4つのポイントを解説します。

大規模修繕の実績と経験値が豊富か

外壁タイル工事は、戸建て住宅の補修とは全く違った技術と経験が必要です。

マンションやビルなどの大規模修繕を数多く手がけてきた業者かどうかを確認してください。

特に、築年数や規模が似た建物での実績があるかが重要です。

確認ポイント
  • 50戸以上のマンション修繕実績があるか
  • 高層建築物での作業経験は豊富か
  • 工事中の住民対応や安全管理体制は整っているか

建物の状態をしっかり調べられるか

タイル剥落の予防には、正確な現状把握が欠かせません。

目視だけでなく、打診調査や赤外線調査などの専門技術を駆使して、建物の状態を科学的に診断できる業者を選ぶことが大切です。

確認ポイント
  • 赤外線建物診断技能師などの専門資格を持っているか
  • 調査結果を分かりやすい報告書にまとめてくれるか
  • 調査に基づいた優先順位付けと段階的な修繕計画を提案できるか

いろいろな修繕方法に対応できるか

建物の状況や予算に応じて、最適な工法を選択できる技術力が必要です。

「この工法しかできません」という業者ではなく、複数の選択肢を提示し、それぞれのメリット・デメリットを説明してくれる業者を選びましょう。

確認ポイント
  • 無足場工法に対応できるか(コスト削減・工期短縮)
  • 部分補修から全面改修まで対応範囲が広いか
  • 将来のメンテナンス性も考慮した提案をしてくれるか

工事後もしっかりサポートしてくれるか

大規模修繕は一度で終わりではありません。

10年、15年後の次回修繕まで見据えた長期的なパートナーシップが重要です。

確認ポイント
  • 地域での営業年数と実績の蓄積
  • 工事後の定期点検やアフターフォロー体制
  • 緊急時(台風後の応急処置など)の対応力

私たち、ゆうき総業は、仙台・宮城の地で多くの大規模修繕を手掛けてまいりました。

無足場工法をはじめとする幅広い技術力と、地域に根ざした誠実な対応で、お客様の大切な資産を長期にわたってお守りします。

まとめ:まずは建物診断から始めよう!事故を防ぐために今できること

この記事では、外壁タイル剥落事故の法的責任と、事故を防ぐための具体的な対策について詳しくお話ししました。

記事で見てきたように、タイル剥落事故は決して珍しいことではなく、管理者には「知らなかった」では済まされない重い法的責任が課せられます。

一方で、経年劣化や施工不良、地震・台風などの外的要因による劣化は、専門的な調査で早期発見でき、適切な修繕工法で確実に対策できることもお伝えしました。

この記事のポイント
  • タイル剥落事故は数千万円~1億円超の賠償責任が発生
  • 管理者は「知らなかった」では済まされない法的責任を負う
  • 専門的な調査による早期発見と適切な修繕が事故防止の鍵

私たち、ゆうき総業は、仙台・宮城で数多くの大規模修繕を手がけてきた外壁の専門家です。

無足場工法による工期短縮・コスト削減と、一級技能士による確かな技術力で、お客様の建物を長期にわたって守ります。

「うちの建物は本当に大丈夫だろうか?」そんな不安をお持ちなら、問題が深刻化する前に、まずは専門家による無料の建物診断から始めてみてください。

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