本足場義務化が大規模修繕に与える影響とは?詳細と目的を詳しく解説
近年、建設現場における墜落事故が増加傾向にあることをご存知でしょうか。この深刻な問題に対処するため、労働安全衛生規則の改正が決定されました。その中心となるのが、本足場の義務化です。
改正の最大の目的は、言うまでもなく労働者の安全確保です。高所作業における危険を最小限に抑え、安心して働ける環境を整えることが急務となっています。そこで導入されたのが、2024年4月からの本足場義務化なのです。
では、具体的にどのような変更が行われるのか、そしてそれによってどのようなメリットがもたらされるのか、詳しく見ていきましょう。
目次
そもそも本足場とは?その定義と特徴
まずは、そもそも「本足場」の定義について解説します。
本足場とは、両側に支柱を持つ構造で、安全性と作業性が高いのが特徴です。一方で、一側足場は支柱を一列設置し、狭いスペースでの設置が容易でコストが安いが、安全性が低いと言えます。
本足場(ほんあしば)
- 建築物の外壁面に沿って、建地(支柱)を二列設置して組み立てる足場。
- 二側足場(ふたかわあしば)とも呼ばれ、広い面を確保できるのが特徴。
- 手すりの設置が可能で、安全性や作業性が高い。
一側足場(ひとかわあしば)
- 建築物の外壁面に沿って、建地を一列設置して組み立てる足場。
- 狭いスペースや建物に近接した場所でも設置しやすく、コストが安い。
- 手すりの設置が難しく、転落事故が発生しやすい。
義務化の対象とその範囲は?
義務化の対象は「幅1メートル」以上の箇所
2024年4月から、建築物の外面から幅が1メートル以上ある場所においては、本足場の使用が原則として義務付けられます。幅が1メートル未満の場合でも、可能な限り本足場の使用が推奨されています。
これは、十分なスペースがある場合に本足場を優先的に使用することで、安全性を高めるための措置です。
このような場合は「一側足場」の使用が認められることも
本足場の使用が困難な場合には、例外的に一側足場の使用が認められます。具体的には、以下のような場合が該当します。
- つり足場を使用する場合
- 障害物の存在により本足場の設置が困難な場合
- 足場設置のために確保した幅が一部公道にかかり、使用許可が得られない場合など
2023年には「点検・記録義務」も強化された
2023年10月1日に先立って施工された規制では、足場の安全性を確保するための点検と記録義務も強化されました。具体的には以下の内容が含まれます。
- 足場の点検時には点検者を事前に指名することが義務付けられました。
- 足場の組立て、一部解体、変更等の後に点検を行い、その点検者の氏名を記録・保存することが必要です。
- 点検実施者の氏名は、その足場を使用する作業が終了するまで保存しなければなりません。
これらの規制はすべて、建設現場での墜落・転落事故を防止し、安全性を高めることを目的としています。施工業者や工事関係者は、新しい規制に対応するための準備を進める必要があります。
次に、義務化による建設業界の影響や、施工会社はどのような準備を進めるべきかご紹介します。
義務化の背景と目的は安全性の向上
この法改正は、建設現場における墜落・転落事故の多発を受けて行われました。過去には多くの労働者がこのような事故で命を落としており、安全対策の強化が求められていました。本足場の義務化により、作業環境の安全性が大幅に向上することが期待されています。
また、これは単に作業員の安全だけでなく、工事の品質にも直結する重要なポイントです。安定した足場があることで、建物全体の耐久性や美観を保つ精密な作業が可能になるのです。
また、施主の皆さんにとっても、本足場の存在は大きな安心につながります。工事中の事故リスクが減少することで、日常生活への影響を最小限に抑えられるからです。さらに、作業環境の改善は工事の効率化にもつながり、結果として施主様の負担軽減にも寄与します。
義務化による「建設業界」への影響と対応策
本足場の義務化により、工事が安全に行われる一方で、建設業界への懸念点もあります。主な懸念点と、その対策について下記で紹介していきます。
義務化による影響
本足場義務化は、建設業界における安全性の向上を目的とした重要な法改正です。しかし、その一方で、費用の増加や工期の延長といった課題も生じています。
足場に関する「費用」が増加する
本足場の設置には、一側足場に比べて多くの材料と手間が必要です。そのため、材料費や人件費が増加し、全体的なコストが上昇します。また、足場の点検や記録義務の強化により、追加の管理コストも発生します。
足場に関する「工期」が延びる
本足場は設置に時間がかかるため、工期が延びる可能性があります。さらに、点検や記録作業のための時間も考慮する必要があります。
義務化への対策
コスト削減・工期短縮ができる「無足場工法」を取り入れる
無足場工法を採用することで、足場設置にかかるコストや工期の増加を回避できます。無足場工法は、そもそも足場を組まないため、義務化による影響を回避し、短工期で低コストを実現できる可能性があります。
例えば、ゴンドラや高所作業車を使用する方法など、無足場での施工方法を検討し、導入を進めることが有効です。
効率的な足場の「設置計画」を立てる
本足場の設置に必要なスペースや材料の確保を事前に計画し、効率的な設置方法を検討します。また、設置に必要な人員の確保と、適切な教育・訓練を実施します。
専門スタッフを配置して「点検・記録体制」を整備する
足場の点検を担当する専門スタッフを指名し、点検方法や記録の保存方法を明確にします。点検記録の保存期間や管理方法について、社内規定を整備します。
法改正に伴う影響を最小限に抑えつつ、安全性を高めるために、建設業者はこれらの対応策をしっかりと実行することが求められます。
「本足場の義務化」でよくある質問
Q1: 本足場義務化はどのような建設プロジェクトに影響を与えますか?
A1: 本足場義務化は、特に大規模修繕工事や高層ビルの建設など、安全性が重要視されるプロジェクトに大きな影響を与えます。これにはマンションの大規模修繕、商業施設の改修、高層ビルの建設などが含まれます。
Q2: 本足場の設置にはどのくらいのコストがかかりますか?
A2: 本足場の設置コストは、プロジェクトの規模や現場の条件によって異なりますが、一般的には一側足場よりも高くなります。これは材料費や設置作業の手間が増えるためです。
Q3: 本足場義務化に違反した場合の罰則はありますか?
A3: はい、労働安全衛生法に基づき、本足場義務化に違反した場合には罰則が科されることがあります。具体的な罰則内容は、違反の程度や状況によって異なりますが、通常、労働安全衛生法に違反した場合の罰則は、6か月以下の懲役または50万円以下の罰金が科されることが多いです。
Q4: 本足場の設置に必要な資格や認定はありますか?
A4: 本足場の設置には、適切な資格を持った作業員が必要です。具体的には、足場の組立て等作業主任者や足場の組立て等作業者の資格が求められます。
Q5: 本足場義務化に伴い、どのような安全対策が追加されますか?
A5: 本足場義務化に伴い、墜落防止用の手すりやネットの設置、定期的な点検と記録の義務などが追加されます。これにより、作業員の安全が一層確保されます。
まとめ:本足場義務化対策として無足場工法は解決策の一つ
本足場の義務化は、建設現場の安全性向上に寄与する重要な法改正です。しかし、足場の設置にはコストや時間がかかるため、これらの負担を軽減する方法として「無足場工法」が注目されています。
無足場工法は足場を組まずに施工を行うため、コスト削減や工期短縮が可能です。
当社では、対応できる業者が少ないこの「無足場工法」を活用した施工を提供しており、豊富な実績と高い技術力でお客様のニーズにお応えしています。コスト削減や工期短縮を実現したい方は、ぜひ当社にご相談ください。無料診断・お見積もりも承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。
この記事を書いた人
結城 伸太郎
職歴:27年
得意分野:防水工事・外構工事・大規模改修管理業務
保有資格:1級建築施工管理技士、1級建築塗装技能士、1級ポリマーセメント防水、1級改質アスファルト防水、外壁1級仕上げ技能者、防水登録基幹技能者、外壁仕上基幹技能者、国際ライセンス サーモグラファーレベル1、監理技術者、職長安全衛生教育、他