マンション大規模修繕の費用が払えない…プロが明かす削減の盲点

マンションの大規模修繕には、数千万円、場合によっては億単位という非常に高額な費用がかかります。
そのため、「予定していた積立金ではとても足りない」「どうやって資金を工面すれば…」といった資金不足の問題は、管理組合やオーナー様にとって、本当に頭の痛い悩みととなっていることでしょう。
しかし、ご安心ください。資金不足に直面した場合でも、打つ手は必ずあります。
この記事を読めば、こんな疑問や悩みが解決します。
- なぜ修繕費用が足りなくなってしまうのか? よくある原因とその対策は?
- 工事のやり方次第で、少しでも費用を安く抑える方法はないか?
- 2回目、3回目に同じように資金不足で困らないためには、どう備えればいいか?
マンションの大規模修繕は、一度きりで終わりではありません。
15年、30年と、建物を健全に維持していくためには、定期的な修繕が必須です。
今回の資金不足への対応策を考えることはもちろん、将来の修繕計画にしっかり備えるためのヒントとして、ぜひこの記事の情報をご活用ください。
目次
大規模修繕費が払えなくなる主な理由とは?
出典:「令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状(国土交通省)」
大規模修繕の費用が不足してしまう背景には、いくつかの共通した原因が考えられます。
まずは、ご自身のマンションがどのパターンに当てはまるのか、主な理由を見ていきましょう。
修繕積立金の設定が そもそも低い |
多くのマンションで、国土交通省の「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」で示される目安よりも低い金額で修繕積立金が設定されています。実際に、国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」では約37%が計画に対し積立金不足と回答しています。新築時に金額が低く設定されたままのケースが多いのです。 |
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予期せぬ故障や 災害による急な出費 |
地震や台風による被害、給排水管の突発的な故障など、想定外の修繕が急に必要になることも。予備費だけでは賄いきれず、大規模修繕のための資金が不足することがあります。 |
積立金の滞納者がいる | 区分所有者の中に滞納者がいることも資金不足の一因となります。実際に、国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」では約29%の管理組合で滞納が発生しています。 |
物価や人件費の高騰で 見積もりが上昇 |
近年の建設コスト上昇により、当初の計画よりも実際の工事見積もりが大幅に高くなるケースが増えています。いざ見積もりを取った段階で、初めて資金不足が明らかになることも少なくありません。 |
このような要因が1つ、また1つと積み重なることで、気づけば修繕予算は大幅に不足…という事態に陥ってしまうのです。
参考:令和5年度マンション総合調査結果からみたマンションの居住と管理の現状(国土交通省)
修繕の先送り、実は損? 知っておくべき2つの影響
「今は資金が足りないから、工事を延期するしかない…」
そう考えるのは、無理もないことかもしれません。
しかし、安易に大規模修繕を先送りしてしまうと、長い目で見るとかえって損をする可能性が高いことをご存知でしょうか?
具体的にどんなリスクがあるのか、見ていきましょう。
①:劣化が進んで結果的にコストが膨れ上がる
建物の劣化を放置すると、予想以上に損傷が広がり、補修範囲が大きくなることがあります。
例えば、屋上防水の劣化を放置して雨漏りが起きると、防水工事だけでなく、内装の張り替えや躯体の補修などで数百万円規模の追加費用が発生することもあります。
早期に対応していれば数十万円で済んだはずの補修が、先送りによって数百万円以上に膨らむケースは珍しくありません。
②:売れない・貸せない? 資産価値低下と住民トラブル
マンションの外観や設備の劣化が目立つようになれば、当然、入居者からのクレームが増えたり、新規の入居希望者が集まりにくくなったりします。
空室率が高まれば管理組合の収入も減少し、さらに修繕計画に影響が出る…という悪循環に陥ることもあり得ます。
また、老朽化が進んだ物件は売却や賃貸の際に不利になり、資産価値が下がりやすいという懸念もあります。
「資産価値を守る」=「計画的に修繕する」という意識がとても重要なのです。
これは建物に限らず、車やご自宅のメンテナンスと同じですよね。
やむを得ず延期する場合に最低限やるべきこと
とはいえ、どうしてもすぐに資金を用意できず、大規模修繕の延期せざるを得ない状況もあるかと思います。
その場合は、被害の拡大を防ぐために、最低限できることだけでも実施するようにしましょう。
- 応急処置・部分補修は行う
雨漏りの原因となる屋上防水や外壁のひび割れ、落下すると危険なタイルの剥がれなど、緊急性の高い箇所だけでも応急処置や部分的な補修を行いましょう。 - 劣化診断・点検の頻度を上げる
専門家による建物診断や定期点検の頻度を増やし、劣化の進行状況を注意深く見守ります。問題が深刻化する前に発見し、対処することが大切です。
また、自治体によっては、劣化診断費用の一部を補助している場合があります。
お住まいの地域の制度を確認し、活用できれば費用負担の軽減につながるかもしれません。
延期を選ぶ場合でも、完全に放置してしまうのは避け、「部分補修」や「点検強化」といったできる限りの対策で劣化の進行を抑える工夫を続けることが大切です。

大規模修繕の周期は12年→18年に延長できる?建物の劣化状況の診断が大切
大規模修繕の実施時期・周期の目安 一般的に12年周期で実施されることが多いですが、これには国土交通省のガイドラインの影響や、特定建築物定期調査における全面打診調査の義務化、塗膜などの劣化を考慮していることなどが理由として挙げられます。 しかし、大規模修繕の実施時期は、マンションの具体的な劣化状況
払えない費用をどう集める? 資金調達4つの選択肢
さて、ここからは具体的に「足りない費用をどうやって集めるか?」という本題に入っていきましょう。
主な方法として以下の4つが挙げられます。まずは、それぞれのメリット・デメリットを比較表で確認しましょう。
資金調達方法 | 主なメリット | 主なデメリット |
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ローン利用 |
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一時金徴収 |
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修繕積立金の 値上げ |
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補助金/ 滞納者対策 |
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それぞれについて、詳しく見ていきましょう。
ローン利用(金融機関からの借入)
まず考えられるのが、金融機関から融資を受ける方法です。
まとまった資金を比較的早く用意できるのが大きなメリットと言えるでしょう。
マンション管理組合向けの主なローンには、「民間銀行」のものと「政府系(住宅金融支援機構など)」のものがあります。
民間銀行ローン | 借入限度額や審査基準は銀行ごとに異なります。管理組合の運営状況や滞納率などもチェックされます。 |
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政府系ローン | 工事費全額まで借りられる場合や、返済期間を長く設定できるため、月々の返済負担を抑えやすいのが特徴です。 |
ただし、ローンを利用する場合、やはり気になるのが利息の負担です。
返済期間が長引けば総支払額は増え、変動金利なら将来の金利上昇リスクもあります。
意外にも、住宅金融支援機構の「マンション共用部分リフォーム融資」の融資額はこの10年間で約3倍に増加しており、近年ではローン利用が一般的になっていることがうかがえます。(参考:日本経済新聞)
利用する際は、管理組合内で返済計画などを慎重に検討しましょう。
一時金徴収(特別負担金)
次に、各住戸から一時的にまとまった金額を集める「一時金徴収」という方法があります。
ローンと違って利息がかからない点は大きなメリットですが、住民の方にとっては一度に大きな負担となるため、合意を得るためのハードルはかなり高くなります。
実施するならば、なぜ一時金が必要なのか、他の選択肢ではなぜ難しいのかなど、丁寧な説明と十分な話し合いが欠かせません。
一般的には、各住戸の専有面積に応じて負担割合を決めることが多いですが、ただでさえ滞納者がいるような状況下で高額な一時金徴収を行うと、さらに滞納者を増やしてしまうリスクも考慮すべきでしょう。
全額一括が難しい場合は、「分割徴収」や「管理組合ローンからの分担返済」などの方法も検討するといかもしれません。
修繕積立金の値上げ
すぐに資金が必要な場合には向きませんが、将来を見据えた根本的な対策としては、毎月の修繕積立金を適切な額に見直すことが一番効果的です。
多くのマンションで積立金が不足気味であり、特に2回目以降の大規模修繕費用は、1回目の1.5~2倍にもなると言われています。
早めの対策が将来の安心につながります。
とはいえ、やはり住民の合意形成が難しいという点が大きな課題です。
なぜ値上げが必要なのか、不足した場合のシミュレーションを示すなど、根拠を明確にして住民の理解を得る努力が大切です。
段階的な値上げにするなどの工夫もいいでしょう。(※積立方式については後述します)
滞納者対策や自治体の補助金活用
資金不足を解消するために、意外と見落としがちなのが「滞納者への対応」と「公的な支援制度の活用」です。
滞納者対策 | 早期の催促や規約整備で滞納を放置しないことが重要です。法的措置が必要な場合もあります。安定的に積立金を回収できる仕組みづくりが大切です。 |
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補助金・助成金の 活用 |
自治体によっては劣化診断や特定工事(耐震、防水等)に支援制度があります。要件を確認し、早めに情報収集を行いましょう。助成金は要件を満たせば交付されやすい一方、補助金は予算や件数に限りがある点に注意が必要です。 |
地道な活動ですが、資金確保につながる可能性もあります。
一度、ご自身のマンションでできることがないか確認してみる価値はあるでしょう。
施工会社視点で解説!費用負担を軽減する3つのポイント
資金不足は管理組合の内部事情だけでなく、実際の工事内容や進め方で抑えられる事もあります。
ここでは、大規模修繕業者だからこそ提案できる対策を3つご紹介します。
工事の優先順位付け+段階施工で支払いを分散
修繕箇所を一度にすべて着工するのではなく、緊急度の高い部分を先行し、他の箇所は時期をずらして施工するという方法です。
- メリット: 資金繰りに合わせて支出を段階的に分散でき、重大な劣化の進行を遅らせられます。
- 注意点: 作業時期を分けると足場等の再手配で追加費用がかかる場合も。長期計画と連動して検討しましょう。
「すべて延期」は避け、優先度の高い工事だけでも先行して負担を分散し、劣化進行を抑える工夫をしましょう。
足場代を節約!「無足場工法」などの代替案
大規模修繕費用の総工事費の実に2〜3割を占める足場の設置・解体費用。
この高額な費用を削減できる可能性があるのが、足場を使わない「無足場工法」です。
- メリット: 低コスト・短工期で施工でき、住民へのストレスや防犯上の不安も軽減できます。
- 注意点: 建物の構造や立地条件によっては施工が難しい場合があり、対応できる業者も限られます。安全確保のため事前調査が必須です。
無足場工法が導入可能かは、複数の施工業者に相談し、比較検討するとよいでしょう。

無足場工法(ゴンドラ)について
【6,000棟以上の施工実績】宮城県仙台市で旅館・ホテルの大規模改修・修繕工事はゆうき総業株式会社(本社:山形県上山市)へ。無足場工法により足場設置費用の削減と工期短縮を実現。マンションやビルの外壁・屋根工事、防水工事におすすめです。
2~3社の相見積もりは必須!安すぎ・短工期すぎは要注意
大規模修繕の費用を適正に抑えるためには、複数の施工会社から見積もりを取り、内容を比較検討することが欠かせません。
少なくとも2〜3社からは見積もりを取得しましょう。
- チェック項目: 工事費の内訳(不自然な点はないか)、不要な付帯工事の有無、施工実績や保証など。
- 注意点: 極端に安い見積もりは追加費用や手抜き工事のリスクがあります。安さの理由を確認しましょう。また、短工期プランはコスト削減になる一方、品質低下のリスクも考慮が必要です。
価格だけでなく、品質や信頼性も含めて総合的に評価しましょう。

マンション大規模修繕の費用相場と4割発生する追加費用のリスクを解説
大規模修繕は、マンションを長く快適に保ち、資産価値を維持するうえで欠かせない工事です。 しかし、まとまった費用が必要になるため、多くの方が様々な不安を抱えているのではないでしょうか。 とりわけ、「費用を払えない場合にどうすればいいのか」という切実な悩みも多く聞かれます。 そこで本記事では、特に
繰り返さない!将来の資金不足を防ぐ3つの鉄則
今回の資金繰りを乗り越えても、マンションの大規模修繕は10~15年ごとに繰り返し必要です。
将来また同じ問題が起きないよう、以下の3つの鉄則を意識し、長期的な備えを行いましょう。
- 長期修繕計画は「5年ごと」に見直す
物価変動や建物の実際の劣化状況を反映させ、工事時期や内容、必要な積立額を定期的に最適化します。国土交通省も推奨しています。 - 積立は「均等積立方式」を基本に
将来必要な総額を見据え、毎月一定額を積み立てる方式(国交省推奨)が、長期的に安定した資金計画を立てやすくなります。住民への説明にはシミュレーションの活用も有効です。 - 滞納対策は早期かつ継続的に
規約整備や早期催告により「滞納を放置しない」体制を維持することが重要です。安定した積立金収入のため、必要に応じて専門家との連携も検討しましょう。
→ 詳しい計画の立て方や積立金の目安については、国土交通省の「長期修繕計画作成ガイドライン」や「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」をご参照ください。
資金不足に気づいたらすぐ行動!専門家への相談も視野に
大規模修繕の資金不足は深刻な問題ですが、打つ手がないわけではありません。
大切なのは、問題に気づいたら早めに行動を起こすことです。
費用が払えないと気が付いたタイミングから、現状整理と対策検討を進めましょう。
- 現状を把握する
不足額や必要な工事時期を正確に把握する。 - 資金調達を行う
ローン、一時金、積立金値上げ、補助金などを比較検討する。 - 工事費用の削減も検討する
複数の業者から見積もりを取り、工事内容やコスト削減策(無足場工法など)を相談する。
管理組合だけでの解決が難しいと感じたら、マンション管理士や建築士といった専門家の意見を借りるのも良いでしょう。
早めに動き出すことが、建物の劣化を最小限に食い止め、結果的に余計なコスト増や大きなトラブルを避けるための近道です。
私たちゆうき総業は、足場を使わない「無足場工法」を得意としています。
場合によっては、仮設費用の20~50%を削減できるこの工法なら、資金不足でお悩みの場合でも、予算内で質の高い工事を実現できる可能性が広がります。
工期短縮も大きなメリットです。
「限られた予算内で、できるだけ質の高い修繕をしたい」「少しでも費用負担を軽くしたい」
そんな切実なご要望に、無足場工法がお応えできるかもしれません。ぜひ一度、当社にご相談ください。
仙台をはじめとした東北6県(青森、岩手、宮城、秋田、山形、福島)および首都圏では、無料出張お見積もりを実施しております。
大規模修繕工事の専門家として、皆様の大切なマンションの資産価値維持を、費用面も含めて全力でサポートさせていただきます。

マンション・ビルの大規模修繕
宮城県仙台市で無足場工法によるマンション・ビルの大規模修繕・改修工事はゆうき総業株式会社仙台支店(本社:山形県上山市)へ。屋上防水、タイル張り替え、外壁塗装、内装工事、シーリング工事、外構工事もお任せください。青森県、岩手県、秋田県、福島県も対応。
この記事を書いた人

結城 伸太郎
職歴:27年
得意分野:防水工事・外構工事・大規模改修管理業務
保有資格:1級建築施工管理技士、1級建築塗装技能士、1級ポリマーセメント防水、1級改質アスファルト防水、外壁1級仕上げ技能者、防水登録基幹技能者、外壁仕上基幹技能者、国際ライセンス サーモグラファーレベル1、監理技術者、職長安全衛生教育、他