マンションの大規模修繕を検討する際、多くの管理組合様やオーナー様が驚かれるのが、想像以上に高額となる「足場費用」です。
実は、足場の費用が高額になるのには、いくつかのハッキリとした理由があります。
建物の特性や現場の環境、そして安全基準の変化など、様々な要因が絡み合って費用を押し上げているのです。
しかし、この高額な費用も、決して「仕方がない」と諦める必要はありません。
この記事では、東北地方で数多くのマンション大規模修繕を手がけてきた専門業者の視点から、足場費用が高額になってしまう主な4つの理由を分かりやすく解説します。
さらに、コストを大幅に削減できる可能性を秘めた「無足場工法」という選択肢についても、詳しくご紹介していきます。
マンション大規模修繕の足場費用、総額・単価はいくら?
マンション大規模修繕における足場費用は、工事全体の予算の中でも大きな割合を占める項目です。
一般的に、足場費用は工事総額のおよそ2割を占めると言われています。
出典:「国土交通省 令和3年度 マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
つまり、もし総額1億円の修繕工事であれば、そのうち2,000万円前後が足場代に充てられる計算になるわけです。
この高額な費用が、実際のところどれくらいの相場で、どのように計算されているのか、詳しく見ていきましょう。
1㎡あたりの足場費用単価はどれくらい?
マンション大規模修繕で使われる足場の単価は、建物の条件や地域によってかなり幅があります。
一般的な相場としては、1㎡あたり700円から1,500円程度と考えておくとよいでしょう。
比較的条件の良い地方の物件では700円~1,000円/㎡くらい、都市部の一般的なマンションでは1,000円~1,500円/㎡、さらに高層マンションになると安全対策の強化などが求められるため、1㎡あたり2,000円を超えることもあります。
足場費用の計算方法(目安としての考え方)
足場費用は、基本的には「足場架面積 × 平米単価」という式で計算されます。
足場架面積というのは、マンションの外周に作業のための余裕分を加えた長さに、建物の高さを掛け合わせた面積のことです。
足場架面積 = (建物の外周(m) + 余裕を持たせる数m) × 建物の高さ(m)
例えば、外周が80mの中層マンションで、足場を設置するための余裕を8mとし、高さが10mだったとしましょう。
この場合、足場架面積は (80m + 8m) × 10m = 880㎡ となります。
もし単価を1,200円/㎡とすると、足場費用は約105万6千円と試算できます。
ただし、これはあくまで大まかな目安です。実際には、マンションの形や現場の状況によって金額は変わってきます。
マンション規模別の費用目安【例:東北の場合】
東北地方のマンションを例に、規模ごとの足場費用の目安をご紹介します。
ここでは、仮に1㎡あたり1,000円とした場合の試算ですが、あくまで参考としてご覧ください。
階数
足場費用目安(外周60m)
備考
2階
約38.4万円
低層マンション
5階
約96万円
中層マンション
8階
約153.6万円
高層マンション
※高層の場合は単価が上がることが多いため、上記は最安値に近い目安です。
これらはあくまで目安であり、実際の費用は建物の状態や立地条件などによって大きく変動することを心に留めておいてください。
足場費用の内訳(主な構成要素)
足場費用は以下のような要素で構成されています。
人件費
足場の設置・解体作業に関わる職人の人件費
資材レンタル費
足場材のリース料(工期が長引くほど増加)
運搬費
足場材を現場まで運ぶトラック燃料費や人力搬入の場合の人件費
材料費
鋼管・足場板・メッシュシート(150〜200円/㎡)など
交通費
作業員の現場までの移動費
運営費
足場会社の事務所維持費や保険料など
安全対策費/保険料
安全管理や万一の事故に備えた保険
中間マージン
元請けの工事業者が足場専門業者に外注する場合の手数料
こうした内訳を知っておくと、見積もりが出されたときに、見積もりの妥当性を判断する材料にもなります。
では次に、なぜマンションの足場費用はこれほど高額になってしまうのか、その主な4つの理由について、一つひとつ詳しく見ていきましょう。
なぜこんなに高い?マンション足場費用が高額になる4つの理由
マンションの大規模修繕で足場費用が高額になる理由は、主に以下の4つが挙げられます。
建物の高さ・形状・規模による影響
敷地の狭さや周辺環境による制約
足場の設置期間と人件費
安全基準強化による「本足場」義務化
それぞれの理由について、詳しく解説していきます。
理由①:建物の高さ・形状・規模が費用を左右する
まず、建物の大きさや高さ、そして形状が足場費用に影響します。
当然ながら、規模が大きいほど、また高層になるほど、足場を組む面積と必要な資材が増えるため、費用も高くなります。
高層マンションほど足場の費用も高くなるのが一般的です。
超高層マンションの仮設工事割合は29.0%であったのに対し、それ以外では21.9%
参考:「国土交通省 令和3年度 マンション大規模修繕工事に関する実態調査」
高層になると、より頑丈な「枠組足場」という種類の足場が使われることが多く、低層向けの足場(くさび緊結式足場など)より1㎡あたりの単価が200円~400円ほど高くなることも。
10階建てクラスのマンションでは、平米単価が2,000円以上に跳ね上がるケースも珍しくありません。
また、凹凸の多い外壁や複雑なバルコニーの形状など、建物の形が複雑な場合も、足場を組む際に余分な部材が必要になったり、組み立てに手間がかかったりするため、費用が上がりやすくなります。
複雑な形状の建物ほど、足場費用も高めに見積もられることが多いでしょう。
理由②:敷地の狭さや周辺環境が追加コストを生む
建物の周りの作業環境、特に敷地の広さも費用に影響します。
マンションの敷地が狭い場合、足場の資材を運び込んだり、組み立てたりする作業に制約が生じ、追加のコストが発生することがあります。
例えば、建物の周りの道幅が狭く、資材運搬用のトラックが現場に直接乗り入れられないケース。
この場合、足場の材料を少し離れた場所から人の手で運ばなくてはならず、その分、運搬の手間や人件費が増えてしまいます。
敷地内に十分な資材置き場を確保できない場合も同様です。
材料を一度に搬入・仮置きできないと、作業に合わせて小分けに資材を配送したり、近隣に一時的な置き場所を借りたりする必要があり、物流・保管コストが増加します。
さらに、都心部のように道路に面した場所で作業する際には、歩行者や車両への安全対策としてガードマンを配置したり、場合によっては夜間作業を行ったりする必要があり、その分の人件費も仮設工事費用に上乗せされることがあります。
敷地・周辺環境による費用増の具体例
資材搬入の困難:トラックが近づけず、人力での運搬が必要になる。
資材置き場の不足:小分け配送や一時的な保管場所の確保が必要になる。
追加の安全対策:ガードマンの配置や夜間作業などが必要になる
このように、敷地や周りの環境に制約が多い現場ほど、足場を組むのに余計なコストがかかり、結果として足場の費用が膨らんでしまうというわけです。
理由③:足場の設置期間が長いほど費用がかさむ
足場を設置している期間、つまり工期の長さも費用に大きく関わります。
大規模修繕では足場を長期間にわたって設置したまま工事を進めるため、足場を組んだり解体したりする人件費はもちろん、足場材のレンタル料や、設置期間中の維持管理にも費用がかかるのです。
マンションの足場の組立・解体作業には、相応の時間と人員が必要です。
一般的な戸建て住宅なら数時間で済む足場組立も、マンションのような大型の建物になると、設置だけで1週間から3週間程度かかることも珍しくありません。
50戸規模の中低層マンションでも足場設置に10日~2週間、100戸を超えるような大きなマンションなら2週間から3週間を要することも。
解体にも設置期間の約1/3ほどの時間がかかるため、これらの人件費が費用の大きな部分を占めます。
これに加えて、足場材をレンタルしている場合、レンタル期間延長に伴う料金が月単位でかかるというわけです。
また、足場は長期間設置していると、労働安全衛生規則により定期的な安全点検が義務付けられており、その都度、点検する人の人件費や記録作成コストが生じます。
設置期間の長期化による費用増の内訳
組立・解体作業の人件費:大規模なマンションほど日数がかかり、高額になる。
足場材のレンタル料:設置期間が長引くほど、月単位で費用が増加する。
定期的な安全点検・維持管理費:法律で義務付けられており、期間中継続的に発生する。
工期が延びる原因としては、天候不良や追加工事の発生、作業員の確保状況など様々です。例えば梅雨や台風シーズンに工事が重なると、当初予定より足場解体が遅れ、その分、想定外のコスト増となることがあります。
理由④:2024年の安全基準強化で「本足場」が義務化
2024年4月1日から施行された労働安全衛生規則の改正も、足場費用を押し上げる一因となっています。
この改正により、高さ2m以上で、かつ建物の外周から1m以上の作業スペースが確保できる場所では、「本足場(ほんあしば)」という種類の足場を使うことが原則として義務付けられました。
本足場とは、建物の外壁に沿って内側と外側の二列に支柱を立て、その間に作業用の床を設置するタイプの足場(「二側足場(ふたかわあしば)」とも呼ばれます)。
従来よく使われていた、建物の片側だけに支柱を立てる簡易的な一側足場(ひとかわあしば)と比べ、本足場は安定性や安全性が格段に高い反面、使う部材の量も設置にかかる手間も大幅に多くなります。
この義務化以前は、コスト削減のために一側足場が使われることもありましたが、法改正後は、建物の周囲に十分なスペースがある場合、原則として本足場を使用しなければなりません。
そのため、使用する足場部材の量が増加し、組立・解体に必要な作業人数や運搬トラックも増えるため、結果として足場費用はこれまでの1.5~2倍程度まで上昇すると試算されています。
「本足場」義務化による費用増の理由
使用部材・工数の増加:従来の一側足場より、安全性が高い分、多くの材料と手間が必要になるため。
原則使用が必須に:高さ2m以上で一定のスペースがあれば、よりコストのかかる本足場が求められるようになったため。
費用への影響:結果として、従来の足場費用から1.5~2倍程度になることも見込まれるため。
作業員の安全確保のためには必要不可欠な措置ですが、マンション大規模修繕における足場費用の高騰という影響をもたらしているのです。
この本足場義務化について、さらに詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてみてください。
「無足場工法」なら仮設費用の20~50%を削減可能
ここまでお読みになって、「やっぱり足場費用は高いなあ…」と感じられたかもしれません。
そこで注目したいのが「無足場工法」です。
無足場工法とは、その名の通り、建物の周りに足場を組まず、ゴンドラや高所作業車といった吊り下げ式の作業装置などを使って外壁の工事を行う方法のことです。
この無足場工法の最大の魅力は、なんといっても足場を組んだり解体したりする費用が削減される、という点でしょう。
その結果、大規模修繕の総費用の中でも大きな割合を占める足場関連のコストを抑えられる可能性があるのです。
さらに、足場の組み立てや解体にかかる期間がなくなることで工期の短縮も期待でき、それに伴って、人件費や足場材のレンタル料なども抑えられ、結果として大規模修繕全体の費用を大きく減らせるケースがあります。
ゆうき総業の事例では、120万円のコスト削減につながった事例もあります。
ただし、無足場工法に対応できる業者は限られているため、業者選定の際には気を付けましょう。
なお、ゆうき総業は、仙台で数少ない、無足場工法を取り扱える施工業者です。
無足場工法のメリットや、実際の事例は以下のページをご覧ください。
足場工事を依頼する際の注意点
足場工事を依頼する際に、注意していただきたい点があります。
特に、提示された見積もりが相場と比べて著しく安い場合は、慎重な判断が求められます。(足場を組む場合)
相場より安すぎる場合は注意が必要
あまりにも相場より安い場合は、注意してください。
足場の組み立てや解体は慎重に行うべき作業なのに、1日に何本も詰めて過密な工程になっている可能性があります。
その場合、事故やトラブルを誘発しやすい環境となり、結局はお客様が嫌な思いをすることになりかねません。
安すぎる価格は、トラブルやミスが起きる可能性が大きいため、安いからと言ってすぐには飛びつかず、なぜその価格で提供できるのか、見積もりの内訳や工事の進め方などをしっかりと確認することが大切です。
足場が無料と言われた場合
時折、「足場費用は無料です!」といった宣伝文句を見かけることがありますが、これには注意が必要です。
原則として、足場の設置・解体、そしてその資材に費用がかからない、ということはあり得ません。
もし「無料」と謳っている場合、その費用は他の工事項目に上乗せされているか、あるいは全体の工事費に含まれているだけで、実質的には無料になっていないケースがほとんどです。
安全かつ質の高い仕事をするためには、無料にすることはあり得ない話なので、「キャンペーンでいまなら足場代が無料」などの売り文句には惑わされないようにしてください。
まとめ:高額な足場費用の悩み、無足場工法で解決できます
ここまで、マンション大規模修繕における足場費用が高額になる主な理由と、その構造についてご説明してきました。
建物の特性
現場の環境
工期の長さ
安全基準の強化
といった要因が絡み合い、マンション足場費用が工事全体の約2割を占めるという現実があることをご理解いただけたかと思います。
しかし、決して「仕方ない」と諦める必要はありません。
ゆうき総業が得意とする無足場工法なら、足場の設置・解体費用を削減し、工期短縮による人件費削減も同時に実現できます。
東北地方で培った豊富な施工実績と高い技術力により、安全性や品質を一切妥協することなく、大幅なコスト削減をサポートいたします。
足場費用にお悩みの管理組合様、オーナー様は、ぜひお気軽にご相談ください。
最適な大規模修繕プランをご提案いたします。